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「木と暮らす、これからのデザイン。」三谷龍二さん(木工デザイナー)

 

 

※この記事はウッドデザイン賞2017の審査員である三谷龍二さんに取材を行ったものです。

 

ウッドデザイン賞(JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2017)は木材で暮らしと社会を豊かにするモノ・コトを表彰し、国内外に発信するための顕彰制度。第3回目となる今回は6月20〜7月28日まで作品を募集し、応募総数453点が集まった。

木製品分野の審査委員である木工デザイナーの三谷龍二さんにお話を伺いました。

 

プロフィール

三谷龍二

福井県生まれ。1981年、長野県松本市にぺルソナ工房を開設。木の器や道具を中心に制作を開始。また発足よりクラフトフェアまつもとの運営にも携わる。そのほか立体や平面作品も手がけ、著書も多数。2011年、松本市内に〈10cm〉をオープン。www.mitaniryuji.com

 


 

 

日本の森林は針葉樹のことが気になる。

 

 

—初めにウッドデザイン賞の審査員をお引き受けになった経緯から伺えますか。

 

三谷:木の制作に携わっている人間としては、やはり木のことがいつも気になります。私は木という素材をデザインとして上手く生活に取り入れることは、実はとても難しいことだとも思っています。陶器やガラスは既に生活に身近な存在ですが、僕たちが木工を始めた時代は、木の日用品といえばお盆や茶托ぐらいしかなかった。現代の住環境の木材も多くは合板ですから、無垢の木に触れる機会は少ないですよね。木を生かす想像力の生まれてこない理由のひとつでもあると思います。

 

例えば、木を器という形にすればもう少し身近になって買いやすいかもしれない。しかし木に食べ物を乗せて良いのだろうかなどの不安もデザインで超えなくてはいけません。私たちの生活に近づける方法をいろんな場所で探していくのが大事だと思います。優秀なデザイナーの存在だけでは足りなくて、そこに暮らす地元の人たちにも、いいもの作る文化が広まっていくといいです。

 

—このデザイン賞は環境面においても意義深い取り組みだと思っているのですが、ウッドデザイン賞の取り組みの可能性はどんなところにあると思いますか。

 

三谷:やはり日本の森林の場合は、針葉樹のことが気になります。僕たち木工家は作品づくりにおいて広葉樹を使う場合が多いのですが、針葉樹は日本における割合が未だに多いにもかかわらず活用事例が少ないため、作品や取り組みにはすごく可能性を感じます。針葉樹は広葉樹に比べてやわらかく、傷がつきやすい特徴があります。昔はまっすぐな柱や建材として、ふすまや障子にも使われていました。日本家屋が減って需要が減った現代の活用方法を考える必要があると思います。

 

 

 

均一化・画一化できないものが大事

 

 

—デザインの話もお聞かせください。木のデザインにおける「良いデザイン」とはどのようなものだと捉えていますか?

 

三谷:まずは長く使って飽きないデザインですよね。見た目がどんなに良くても、使っていくうちに飽きのくるデザインはあまりよくない。気に触ったり、目立つ部分のないことも大事です。それが「普通のデザイン」であり、「生活できるデザイン」です。そんなものを木で作ることができればと思います。

 

— 三谷さんは、現代における木そのものの価値についても考えていらっしゃると思いますが、それについても教えてください。

 

三谷:これからの時代は均一化・画一化できなかったものが大事だと思います。木という素材は、近代の工業化の過程では扱いにくいためどこか避けられていた面がありました。鉄やガラス、コンクリートと異なり、木は量産しにくい。合板や集積材にしたりなど量産の方法を試行錯誤してきましたが、木そのものの良さを深く考えた方が良いと思います。

 

—木の良さを生かした具体例として思い浮かぶプロダクトは何かありますか?

 

三谷:例えば杉などの針葉樹は、木目がまっすぐに通っていて美しいです。例えば部屋の中にあるタオルかけとか、旅館にあるような昔の衣紋掛など、方法はいくらでもあると思います。一個一個を素材の持ち味を生かす伝統的な考え方で木と接すれば美しいものになるはずです。非合理的な部分を持っている人間と、木の非合理性というものはどこかで結びつくはずだと思います。

 

 

強いものよりは、静かにそこにあるもの。

 

 

—最後にもう一つお聞かせください。全国からウッドデザイン賞に応募する作り手やデザイナーさんなど今どんなものを作れば良いかと模索する人は多いと思います。デザインも奇抜ではなく「ふつう」という流れになりつつある今、その先の時代に来たるデザインのあり方についてどのようにお考えですか。

 

三谷:未来は予測できないし、僕もわからないんです。でもどこかで未来に繋がってくものがあるとすれば日本人の自然観かもしれない。日本人は昔から台風や地震に負けながらその中で雑草のように這い上がるところがあって、勝敗で言えば「負けて」いる。

 

そうした弱さを、自分たちの大切なメンタリティだと思っているところもあると思います。大輪の花よりも、野の花。強いものよりは、静かにそこにあるもの。そういうものが恐らく、日本人にとってすごく大事なものとして残っていくだろうなという気はしますね。それが何かというのは、その時になったらわかるのだと思います。

 

 

以下、ウッドデザイン賞2017で受賞作品(木製品分野)の一部をご紹介します。

 

 

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CJシリーズ studioJig(奈良) 優秀賞 ライフスタイル部門木製品分野

 

特殊な成形技術を使い、家具用材としては不向きとされてきた針葉樹(吉野杉)を利活用した家具シリーズ。その特殊な形状は、美しさと強度を兼ね備え、家具としての実用性を持たせつつ、宿泊施設や公共施設などの非日常感を演出する事が可能。家庭以外にも旅館、各種施設などで利用が見込まれる。

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コートハンガー「ALBERO」 株式会社天童木工(山形)

 

イタリア語で「木」意味する“ALBERO”は森の木々をモチーフにしたコートハンガー。 この美しいフォルムを当社の独自技術である「RPW(Roll Press Wood)技術」を用いることにより、広葉樹と同様の強さを軟質針葉樹(スギ材)で実現している。

 

 

<ウッドデザイン賞について>

WD2017.カラー.英文.縦

木の良さや価値を再発見させる製品や取組について、特に優れたものを消費者目線で評価し、表彰する新しい顕彰制度。これによって“木のある豊かな暮らし”が普及・発展し、日々の生活や社会が彩られ、木材利用が進むことを目的としている。受賞者には様々な広報・PRの場を提供するとともに、生産から消費に関わる人のマッチングを進めている。

www.wooddesign.jp

 

 


photo(最上部):Yuko Saito(horizont)

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