BAKERY 004

五感に染み込む幸せな生活を。

LIFEAT

埼玉_土呂

あらゆるものに命が存在している。

人も、野菜も、パンを膨らませる菌も。

息吹について日々の中で

気に止めることはないけれど、

でもふとした瞬間に

感じることがあるとすれば、

こんなパンを食べた日かもしれない。

食べる人の幸せを真摯に願う、

豊かで繊細な感性によって

つくられたパンを。

真っ白な壁の店内に、たっぷりと太陽の光が差し込む。置かれた観葉植物は青々とし、木のカウンターの上には、パンがひとつひとつ透明の袋に包まれ、静かに並べられている。そこに流れる空気は、明るく清々しい。店頭でひときわ目を引くのは、自家製酵母で焼く大きくて長いカンパーニュ。それを、4センチから量り売りする。「天然酵母のパンは修業時代いろいろ焼いていましたが、自分が焼くならこの形だなっていうのがあって。」そう話すのは、製造を主に行う店主の鈴木伸一さん。

ほかには、生地にカカオを練り込んだり、クランベリーやオリーブを混ぜた味も見た目も個性豊かなプチフランスや、イーストを使用した菓子パンも並ぶ。どれも手に収まるようなサイズ感だ。選ぶ楽しみを味わい、料理やお酒、コーヒーに合わせるなど、毎日のさまざまな場面でおいしく食べることができるよう、昔ながらのハード系に偏らず幅広い品揃えにしている。そして、どのパンにも共通する素材へのこだわりは、食べる人の暮らしを思う願いが込められている。「お客さんに幸せな生活を送ってほしいんです。そのために、素材も製法も試行錯誤し、パンというものを通して、その願いを叶える仕事を一生かけてやっていきたいと考えています」。

1_全粒粉天然酵母で焼いたカンパーニュ。縦長に大きく焼くことで、内側のしっとり感と表皮のがっつりとした力強さのコントラストが生まれる。オーガニックのくるみやレーズン入りのほか、プレーンも。2_細やかな手つきでプチフランスにクープ(切れ目)を入れる鈴木さん。3_白い壁は漆喰。木造のお店は、実は「良い菌が住み着いてくれるように」と酒蔵をイメージしたのだという。4_パン作りに欠かせない石の厚みにこだわった電動石窯。輻射熱で内側からしっかり火が入り、大きなカンパーニュもおいしく焼き上がる。食パンの型は、手に持って食べる時の感覚から、5mm単位で調節して作ってもらった。5_液種天然酵母を使ったプチフランス。ユニークだが自然な形は、素材が訴えてくるものを汲み取って成形する。

1

2

3

4

5

開業して8年経つ製造室は、掃除が行き届いている。そこでは鈴木さんの繊細な感覚がパンの形になっていく様子が見える。例えば、パン作りにおいて重要な温度は計らない。研ぎ澄ませた感覚の中で、素材や生地の声を聞き、微調整していく。その環境で働く酵母について聞くと「育てているような、それでいて育てられているような」と、ゆっくりと考えながら、答えてくれた。

「苦労して大切に育てた素材を提供してくれる人たちや、お店のスタッフさんがいてくれること、自分が健康で仕事ができること、お客さんが食べておいしいと感じてくれること、その全てに感謝して、頭が下がる思いで作らせてもらっています」。

Photo_Haruka Shinzawa

Shop Data

LIFEAT

埼玉県さいたま市北区土呂町2-10-8

営 10:30~19:00

休 日・月曜

www.lifeat.co/shop

※2018年6月号掲載時の情報です